2-3. 協力者の特定:ステークホルダー分析

プロジェクトは技術だけで進むものではなく、人の協力によって推進されます。プロジェクトを成功させるには、プロジェクトに関わるすべての人々、すなわち「ステークホルダー(利害関係者 / Stakeholders)」を初期段階から特定し、協力を得るための準備が必要です。

ステークホルダーの定義

ステークホルダーとは、「プロジェクトの活動や成果によって、プラスまたはマイナスの影響を受ける、あるいはプロジェクト自体に影響を及ぼす可能性のある個人、グループ、または組織」のことです。

主なステークホルダーの例:

  • プロジェクトスポンサー(資金提供・経営陣)
  • 顧客・エンドユーザー(最終的な利用者・購入者)
  • プロジェクトチームメンバー(PM、エンジニア、デザイナーなど)
  • 他部門のマネジャー(リソースの競合相手)
  • 外部パートナー(ベンダー、コンサルタント)
  • 規制当局・競合他社・地域社会など

ステークホルダー分析と「権限・関心マトリクス」

ステークホルダー全員に同じ時間と労力を割くことは現実的ではありません。そのため、ステークホルダーを以下の2つの軸で分類し、対応の優先順位を決めます。

  1. 権限(Power / 影響度): プロジェクトの方向性や予算、進め方を変更・停止させる力の強さ。
  2. 関心(Interest / 関心度): プロジェクトの結果が、その人自身やその部門にどれだけ大きな影響を与えるか。

この2つの軸を組み合わせたものが「権限・関心マトリクス(パワー・インタレスト・グリッド)」です。

象限(タイプ) 特徴 マネジメントの方針 具体的な対象例
高権限 ・ 高関心 プロジェクトに対する影響力が強く、結果にも高い関心を持つ人物。 「密接に管理する(Manage Closely)」
頻繁に協議し、主要な決定には必ず巻き込み、常に味方でいてもらう。
プロジェクト・スポンサー、メインの顧客責任者。
高権限 ・ 低関心 強い発言力や決定権を持つが、実務にはあまり興味がない人物。 「満足させておく(Keep Satisfied)」
不満を持たせないよう配慮しつつ、適切な頻度と量で情報共有を行う。
法務部門、社内の財務責任者、ITインフラ部門長。
低権限 ・ 高関心 決定権は持たないが、プロジェクトの成否に生活や仕事が直接影響される層。 「情報を伝達しておく(Keep Informed)」
定期的な進捗報告や説明会を通じて状況を伝え、不安を解消する。
システムを毎日使う現場の一般社員(エンドユーザー)。
低権限 ・ 低関心 プロジェクトに対する影響力も、それによる個人的影響もほとんどない層。 「監視する(Monitor)」
定期的に状況を確認し、関心度や権限が途中で変化しないかを見守る。
周辺の事務サポートスタッフ、外部の一般的な取引先。

権限・関心マトリクス

以下は、ステークホルダー分析で最も広く用いられる4象限マップを可視化したものです。

関心度 (Interest) → 高 権限・影響度 (Power) → 高 満足させておく (高権限・低関心:法務・役員など) 密接に管理する (高権限・高関心:スポンサーなど) 監視のみ (低権限・低関心) 情報を伝達しておく (低権限・高関心:利用現場など)
図 2-3:権限・関心マトリクス(パワー・インタレスト・グリッド)

ステークホルダー登録簿

分析した結果は、「ステークホルダー登録簿(Stakeholder Register)」と呼ばれるドキュメントに記録します。ここには、氏名、役職、連絡先、プロジェクトにおける役割、分類(マトリクスの位置)、主な要望、および「プロジェクトに対する態度(支援的、中立的、敵対的など)」が記載されます。

特に、新システムの導入によって現在の業務フローが変更され、一時的に負荷が増大することなどを理由に反対しているステークホルダーがいる場合があります。このような否定的なステークホルダーに対して、どのように理解を求め、中立的あるいは協力的な姿勢に変えていくかを計画することは、PMの重要な活動です。