5-2. リスク対応計画:回避・転嫁・軽減・受容

リスクを分析して優先順位を決めたら、次のステップは具体的な「リスク対応計画(Risk Response Planning)」の策定です。リスクの種類や大きさに応じて、どのようなアクションを取るかをあらかじめ計画しておくことで、トラブル発生時の被害を軽減することができます。

「脅威(マイナスのリスク)」に対する4つの戦略

PMBOKガイドでは、脅威に対する代表的な戦略として以下の4つを定義しています。

対応戦略 定義 具体的なアクション例 プロジェクトへの影響
回避
(Avoid)
リスクの原因を取り除く、またはプロジェクト計画を変更して影響を回避すること。 ・「不慣れな新機能の開発を取りやめる(スコープ除外)」
・「台風の時期を避けて工事を1ヶ月後ろ倒しにする」
スコープの縮小やスケジュールの長期化など、計画に大きな影響を与えることが多いですが、最も確実な方法です。
転嫁(移転)
(Transfer)
リスクによる影響や責任を第三者(外部)に引き受けてもらうこと。リスクそのものは消えない。 ・「損害保険に加入する」
・「リスクの高い開発作業を、固定価格契約で外部ベンダーに外注する」
保険料や外注費用などの金銭的コストが発生する。
軽減(緩和)
(Mitigate)
リスクの発生確率、または発生時の影響度(被害)を許容範囲内まで下げるための予防措置を取ること。 ・「複雑なコードに対して、事前に自動テスト環境を構築する」
・「プロトタイプを作って事前検証する」
事前に対策コスト(適合コスト)がかかるが、不適合コストの増加を防ぐ戦略。
受容(受け入れ)
(Accept)
特別な予防措置は取らず、リスクを受け入れること。能動的受容(予備費を積んでおく)と受動的受容(何もしない)がある。 ・「発生確率が低いため、特別な対策は取らない」
・「発生時はコンティンジェンシー予備費から費用を出す」
事前コストはゼロだが、発生した場合は直接的なスケジュール遅延や追加コストを被る。

脅威への対応イメージ

各対応戦略がリスクに対してどのようなアプローチを取るかを可視化したものです。

回避 (Avoid) 障害物を迂回 確率・影響 = 0 転嫁 (Transfer) 保険・契約 他者へ移転 軽減 (Mitigate) 盾で防ぐ 確率・被害を低減 受容 (Accept) そのまま進む 予備費のみ確保
図 5-2:脅威に対する4つの主要な対応アプローチイメージ

「機会(プラスのリスク)」に対する4つの戦略

プロジェクトにメリットをもたらす「機会」に対しても、PMは適切なアプローチを計画します。

  1. 活用 (Exploit): 機会が確実に実現するよう積極的に行動すること(例:最も優秀な開発者をアサインして、工期短縮を確実にする)。
  2. 共有 (Share): 機会をより活かせる第三者と手を組むこと(例:自社だけで対応できない入札について、他社と共同JVを結成して受注確率を高める)。
  3. 強化 (Enhance): 機会の発生確率や影響度を高めるための対策を打つこと(例:事前にインフラを増強しておき、キャンペーン時のアクセス増加による売上向上の機会を強化する)。
  4. 受容 (Accept): 機会に対して能動的なアクションは取らず、発生した場合にはその恩恵を受け入れること。