6-2. 進捗とパフォーマンスの測定:EVM(アーンドバリュー管理)の仕組み
プロジェクトの進捗を確認する際、「予定していたタスクの50%が終わりました」や「予算の半分を使いました」という報告だけでは、全体の状況を正確に把握することは困難です。これらを統合し、客観的な数値として評価する手法が「EVM(Earned Value Management:アーンドバリュー管理)」です。
EVMの3つの基本指標
EVMでは、ある特定の評価基準日(現在)において、以下の3つの数値を金銭価値(円または工数)に換算して比較します。
- PV (Planned Value / 計画値): 現時点で「完了しているはず」だった作業の予算額。
- AC (Actual Cost / 実コスト): 現時点で「実際に支払った」総費用。
- EV (Earned Value / アーンドバリュー:獲得価値): 現時点で「実際に完了した」作業の、当初の計画予算額。
EV(アーンドバリュー)の重要性
EVMの特徴は、「実作業の価値を、あらかじめ決めておいた予算価格(EV)で評価する」点にあります。これによって、「予算を超過しているのか」「作業が遅れているのか」を区別して把握できるようになります。
EVMの計算式と判定基準
3つの基本指標から、スケジュールとコストの「差異(量)」および「効率(指数)」を算出します。
| 評価項目 | 略称 | 計算式 | 数値の読み方・判定基準 |
|---|---|---|---|
| コスト差異 (Cost Variance) | CV | `CV = EV - AC` | ・`CV > 0` : 予算内に収まっており黒字(良好)。 ・`CV < 0` : 予算を超過して赤字(警告)。 |
| スケジュール差異 (Schedule Variance) | SV | `SV = EV - PV` | ・`SV > 0` : 予定より早く進んでおり進捗良好。 ・`SV < 0` : 予定より遅れており遅延が発生。 |
| コスト効率指数 (Cost Performance Index) | CPI | `CPI = EV ÷ AC` | ・`CPI ≧ 1.0` : 効率が良い、または予定通り。 ・`CPI < 1.0` : 1円のコストに対して1円未満の成果しか出ていない(非効率)。 |
| スケジュール効率指数 (Schedule Performance Index) | SPI | `SPI = EV ÷ PV` | ・`SPI ≧ 1.0` : 予定以上のペースで進行している。 ・`SPI < 1.0` : 予定ペースを下回っている(進捗遅延)。 |
EVMグラフ(S字カーブ)
EVMの進捗は、時間の経過に伴い以下のような「S字曲線(S-Curve)」を描いて可視化されます。
図 6-2:EVMグラフ(PV・AC・EVによる進捗およびコスト実績の乖離可視化)
EVMによる将来予測
EVMの特徴は、現在のパフォーマンスの傾向をもとに、プロジェクトの最終的な状況を予測できる点にもあります。
- EAC (Estimate at Completion / 完成時総コスト見積もり):
現在の効率が続いた場合、プロジェクト終了までに最終的に総額いくらかかるかの予測値。
`EAC = BAC(当初総予算)÷ CPI` - ETC (Estimate to Complete / 残余作業コスト見積もり):
プロジェクトを終えるために、今後追加でいくら必要かの予測値。
`ETC = EAC - AC`
例えば、当初総予算(BAC)が1,000万円のプロジェクトにおいて、現在のCPIが「0.8(非効率)」である場合、完成時の予測費用(EAC)は `1,000万円 ÷ 0.8 = 1,250万円` と計算され、現状の進め方を改善しなければ「250万円の予算超過」が見込まれます。PMはこの情報に基づき、予算の追加申請や早期の是正措置を講じることが可能になります。