3-3. スケジュール作成の第一歩:アクティビティの順序設定
WBSを構築してワークパッケージを定義しただけでは、スケジュールは作成できません。次のステップとして、それぞれの作業を誰が、どの順番で行うかを定義する「アクティビティの順序設定」が必要になります。
プレシデンス・ダイアグラム法(PDM)
スケジュール作成において、タスク同士の論理的なつながり(依存関係)を整理・可視化するために用いる標準的な手法が「プレシデンス・ダイアグラム法(PDM:Precedence Diagramming Method)」です。
PDMでは、タスクを「ノード(四角)」で表し、その間の関係を「矢印」でつなぎます。タスク間の依存関係には以下の4つのタイプがあります。
| 依存関係のタイプ | 略称 | 定義 | 具体的な実例 |
|---|---|---|---|
| 終了-開始関係 (Finish-to-Start) | FS | 先行アクティビティが終了するまで、後続アクティビティを開始できない。最も一般的な関係。 | 「コンクリートの基礎を流し終えて固まる(終了)」→「柱を建てる(開始)」 |
| 開始-開始関係 (Start-to-Start) | SS | 先行アクティビティが開始してからでなければ、後続アクティビティを開始できない。並行して進める際に使用。 | 「道路の舗装を開始する(開始)」→「並行して交通誘導を開始する(開始)」 |
| 終了-終了関係 (Finish-to-Finish) | FF | 先行アクティビティが終了するまで、後続アクティビティを終了できない。同時収束時に使用。 | 「システムのテストをすべて完了する(終了)」→「マニュアルの最終校正を完了する(終了)」 |
| 開始-終了関係 (Start-to-Finish) | SF | 先行アクティビティが開始するまで、後続アクティビティを終了できない。使用頻度は低い。 | 「夜勤の交代要員が到着し勤務を開始する(開始)」→「日勤の警備員が業務を引き継いで退勤する(終了)」 |
リード(Lead)とラグ(Lag)
アクティビティの依存関係には、時間的な調整を加えることができます。
- リード(Lead / 前倒し): 先行タスクの完了前に、後続タスクを前倒しで開始させる時間。スケジュールを短縮したい場合に設定します。
- ラグ(Lag / 待ち時間): 先行タスクの完了後に、意図的に設ける待機時間。物理的な待ち時間がある場合に設定します。
PDMの接続パターン
以下は、PDMで用いられる主要な3つの接続パターンをビジュアル化したものです。
図 3-3:プレシデンス・ダイアグラム法とタイム調整(リード・ラグ)のモデル
依存関係の種類
タスク間の依存関係は、その性質に応じて以下の3種類にも分類されます。
- 強制依存関係(ハード・ロジック): 物理的にその順番でしかできない関係(例:建物の基礎を打つ前に屋根は作れない)。
- 任意依存関係(ソフト・ロジック): 物理的な制約ではないが、ベストプラクティスや過去の経験から推奨される順序(例:レビューが終わるまで実装を始めない)。緊急時には並行して進める(ファスト・トラッキング)対象になります。
- 外部依存関係: プロジェクトチームがコントロールできない、外部環境や他組織の活動に依存する関係(例:行政の承認が下りるまで工事を開始できない)。
これらの依存関係を適切に識別し、つなぎ合わせることで、現実的なスケジュールネットワークが形成されます。