7-2. 契約形態の種類:固定価格、実費償還、タイム&マテリアル
外部のベンダーを調達することが決定したら、次に重要な決定は「どのような形式で契約を結ぶか」です。契約形態によって、プロジェクトが遅延・コスト超過した際の金銭的なリスクを「発注者」と「受注者(ベンダー)」のどちらがどれだけ負うのかが決定されます。
代表的な3つの契約形態
PMBOKガイドでは、契約を以下の3つの大カテゴリに分類しています。
| 契約のカテゴリ | 概要・特徴 | 発注者(あなた)のメリット | 受注者(ベンダー)のメリット |
|---|---|---|---|
| 固定価格契約 (Fixed-Price / FP) | 定義された成果物に対し、あらかじめ決定した固定金額(一括払い)を支払う。日本の請負契約に近い。 | 最大コストが確定しており、ベンダーが遅延しても追加費用が発生しない(発注側のリスクが小さい)。 | 効率よく早く作れば、その分ベンダーの利益(マージン)が大きくなる。 |
| 実費償還契約 (Cost-Reimbursable / CR) | 成果物にかかった実際の人件費・部材費(実費)に、ベンダーの利益(手数料)を加算して支払う。 | 仕様が未確定でも即座にスタートできる。無駄なリスクプレミアム(予備費)を支払わずに済む。 | 仕様変更やトラブルが発生した場合でも、実費が補償されるため受注者側の赤字リスクが低い。 |
| タイム&マテリアル契約 (Time & Materials / T&M) | 単価(1人月あたり・1時間あたり)× 稼働時間で支払う。派遣契約や一般的な準委任契約に近い。 | リソースの増減が容易。必要がなくなれば即座に契約を解除または縮小できる。 | 稼働した分だけ確実に請求できるため、ベンダー側の売上予測が立てやすい。 |
契約形態ごとのリスク分配
契約形態の選択において最も重要なのは、「要件(スコープ)の明確さ」です。
- 要件が明確な場合: 固定価格契約(FP)を選択します。リスクは受注者側が負います。
- 要件が不確実(R&Dや新規開発)な場合: 実費償還契約(CR)を選択します。リスクは発注者側が負います。
発注者と受注者のリスク配分
以下は、契約の形式によって「発注者」と「受注者(ベンダー)」のどちらが金銭的リスクを多く背負うかを表したマップです。
図 7-2:契約形態による発注者と受注者(ベンダー)のリスク負担度マップ
契約マネジメントの注意点
「固定価格契約だから、どれだけ遅延してもベンダーが自腹を切るはずで、自社には影響がない」と考えるのは、PMとして危険です。
ベンダーの損失が拡大すると、ベンダー側の優秀なメンバーが離脱し、最悪の場合は契約の継続が困難となり成果物が手に入らなくなります。金銭的リスクが移転されていても、「成果物を得る」というプロジェクトの本来の目標が失われるため、どの契約形態であってもベンダーの進捗状況を綿密に監視し、共存共栄のパートナーシップを築くことが重要です。